P is for PUBG

Published: 2017-12-06 00:00

2017年のゲームを語るにはこれしかない

2017年3月24日、ゲーミングプラットフォームの Steam に韓国のデベロッパー Bluehole より PLAYERUNKNOW'S BATTLEGROUNDS が登録されて伝説が始まりました。早期アクセスという、有料ベータとして開始されたこのゲームは、100人でのTPSを勝ち抜いて1人の勝利者を決めるという単純なルールで、さらに平たく言えばただ単に「生き残れ」ばいいというゲームです。例えるならば映画「バトルロワイヤル」で、実際に同作からインスパイアされて制作されていることが公表されています。(同作を模したスキンもあります。)
敵の位置が不明、体力管理がシビア、偏差撃ちや重力を考慮した射撃も必要、そして自分以外の99人が敵というストイックなゲームにかかわらず発売から3日で1,100万ドルの売上を達成しました。さらに3ヶ月後には400万本、7月には総額35万ドルの世界大会をドイツで開催、そして9月6日には1,000万本を販売と怒涛の展開をみせています。
また、オンライン上の同時接続数では2016年に129万人を記録した DOTA2 を軽く飛び越え150万人を突破しています。動かせるスペックのPCとブロードバンドがそれだけ存在しているのも驚きです。

国が注目するゲーム

そんなPUBGのアクセス数をささえているのが中国市場です。中国市場にはテンセントというとてつもないゲームパブリッシャーがいます。(アクティビジョン・ブリザードなどの大株主。LoLの運営会社、Unreal Engineの開発元、スーパーセルなどの親会社)そのテンセントがまったく旨味を吸えないまま中国市場のユーザーベースをとられていました。
まずテンセントは子会社で Unreal Engine を開発している Epic Games に PUBG とまったく同じスタイルのゲームを無料で配布させました。これはまだ PUBG がリリースされていないコンシューマー機で一定の人気を獲得することに成功しました。
つぎのアタックは中国政府からです。中国オーディオ・ビデオ・デジタル出版協会(中国音像与数字出版协会游戏出版工作委员会)は、バトルロワイヤル系のゲームを「社会主義の中核価値と中国の伝統文化や道徳的ルールから大きく逸脱しており、青少年の心理的および身体的健康に反する」として、研究、開発、輸入を停止する勧告を発表しました。実際に Bluehole はこうなることを懸念して中国市場での PUBG の血の色を青にするという対応をしていました。
そしてその後、テンセントと Bluehole が交渉を開始し、テンセントが中国国内における独占運営権を取得し、中国市場独自のモバイル版のリリースが決定しました。めでたく"社会主義の中核価値と中国の伝統文化や道徳的ルールから大きく逸脱"しないゲームとなりました。

なぜか儲かる

さらにすごいのがこのゲーム、アイテムの販売が可能です。遊んでるだけでもとが取れるという謎のコンテンツになっています。人気があるのはいいことで、高額アイテムには万単位のものもあります。

こんなPUBG、まだ正式リリースされていません。

前代未聞な記録の数々で、すでにポジティブフィードバックに入っているこの作品は、どうしてここまでヒットしているのか分析が追いついていません。近日中にはマイクロソフトが時限つきでXBOXに先行リリースすることが決定しています。シューターゲームの伝説的作品として、今後何年にもわたってゲーマーが語るであろう作品の紹介でした。

この記事は、2017 Advent Calendar 2017 の 6 日目の記事として書かれました。前日は yuta25 さん、明日は polygon_planet さんです。お楽しみに。

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